『第273話』 大腸の検査には塩類下剤を使用
下剤は便秘時のほか、大腸のエックス線検査や内視鏡検査の時にも使用される。
大腸のエックス線検査は、肛門からバリウムと空気を入れ、体の向きをさまざまに変えながら撮影するもので、大腸がんやポリープ、過敏性腸症候群、炎症性の腸疾患、虚血性の腸疾患などの診断に必要だ。
大腸の内視鏡検査では、がんやポリープ発見のほか、痔(じ)や潰瘍(かいよう)の様子もよく分かる。肛門にゼリーを付けて局所麻酔をし、スコープを挿入して腸の内部をモニターテレビで見ることができる。
どちらも検査時には腸の中を空にしなくてはならない。大腸検査用の下剤としては、クエン酸マグネシウムがよく使われる。液剤と散剤があり、検査予定の10~15時間前に服用する。
またゴライテリー液と呼ばれる下剤は検査の4時間前から飲み始める。10分ごとに200ミリリットルずつ、1時間に1リットルの割合で飲み続けるようにする。2、3リットル飲んだあたりで便が透明の水状になってくるので、これをめどに飲むのを中止して検査を行う。しかし、これだけの量を決められた時間内で飲むのは少々つらいかもしれない。
これらの下剤は塩類下剤と呼ばれ、クエン酸マグネシウムをはじめ、塩化ナトリウムや塩化カリウムなど水に溶けやすい無機塩が選ばれる。
これらの水浴液は、腸壁からほとんど吸収されず、腸管内の水分も分泌液も閉じ込めるので腸内は水分でいっぱいになる。すると腸壁は水圧による物理的な刺激を受けて蠕動(ぜんどう)運動を起こし、服用後2時間ほどで水用便となる。
クエン酸マグネシウムは上行結腸の奥まで清浄化でき、高圧浣腸(かんちょう)よりも効果がある。またバリウム粒子の腸粘膜への付着がよくなるため、大腸のエックス線検査に適した下剤だ。もちろん内視鏡検査にも使用できる。
逆にゴライテリー液はバリウムの吸着不良を起こすので、エックス線検査よりは内視鏡検査に適している。