『第275話』 必要な成分のみ集めて有効利用

日本では、ボランティアというと、無料で行う仕事という意味で使われることが多い。しかし、真の意味は「志願する者」だ。従ってボランティアを募る際に、強要はない。お願いするだけだ。

献血は奉仕の精神に基づき、人道的な行為としてボランティアによって行われている。この提供してもらった血液は、有効かつ安全に使用する必要がある。

血液製剤は全血製剤、血液成分製剤、血漿(けっしょう)分画製剤の3種に大別できる。このうち全血製剤と血液成分製剤が、輸血用血液製剤と呼ばれる。

血漿分画製剤には重症感染症の治療に使う免疫グロブリン、血友病患者に使う血液凝固因子、やけど治療に使うアルブミン製剤がある。

血液をしばらく放置すると、血漿と呼ばれる液体成分と血球と呼ばれる有形成分とに分かれる。血漿にアルブミンや免疫グロブリン、血液凝固因子などの成分が含まれている。

近年、輸血療法の進歩と相まって全血製剤の需要が減り、不足している血液成分のみを補給することが多くなった。全血献血ですべての血液製剤を自給しようとすると、大量の血液が必要となり、しかも赤血球が余るという現象が起きてしまう。血液を有効利用するために、血小板と血漿部分だけを献血する成分献血の普及を図っているのはこのためだ。

エイズ問題で知られるようになったクリオ製剤は、正式にはクリオプレシピテートという。クリオは冷凍、プレシピテートは沈殿という意味だ。凍結血漿を摂氏4度で一夜かけて解かすと、一部は解けずに沈殿する。これを遠心分離して集め、氷点下20度で再凍結して製造する。これを乾燥させると乾燥クリオになる。

この中には血友病Aの患者が必要とする第Ⅷ因子や血友病Bの患者が必要とする第Ⅸ因子が多量に含まれている。

現在では、さらにこれを精製し、ウイルスを不活性化するため加熱処理して製造していることは言うまでもない。