『第278話』 お湯に溶かしてよく効く漢方薬

漢方薬が手軽に服用できるようになった。漢方薬といえば昔は、生薬の根や葉を刻んだものをやかんや土瓶で煮出し、煎(せん)じて飲むというやり方だった。今は煎じた液を乾燥させ、粉薬のようにしたエキス剤がある。

生薬の持つ独特なにおいと味が苦手な人にはエキス剤は随分飲みやすいことだろう。しかし、桂枝(けいし・桂の樹皮)や蘇葉(そよう・シソの葉)に代表される、いわゆる芳香性の生薬は、その香りをかぐことで薬効が表れる。

風邪をひいて食欲がないときに処方される漢方薬に、香蘇散(こうそさん)がある。香附子(こうぶし・ハマスゲの根茎)、蘇葉、陳皮(ちんぴ・ミカンの皮を干したもの)、生姜(しょうが)、甘草(かんぞう)が含まれ、実際にこれらの香りをかぐことで胃酸の分泌が増え、消化管運動が活発になることが確かめられている。それには煎じた直後、湯気の立った状態で飲む必要がある。

また、漢方薬は飲んでいる最中から気分がよくなる、と言われる。これは、立ちのぼる蒸気に含まれる成分が鼻や口腔(こうくう)粘膜から素早く吸収されるからだ。

もちろん、エキス剤をお湯に溶かして飲んでも同様である。漢方薬には「葛根湯」(かっこんとう)や「小柴胡湯」(しょうさいことう)などのように「湯」の付くものが多い。これらのエキス剤は、お湯に溶かして飲んだ方が効果が大きい。

「小青竜湯」(しょうせいりゅうとう)は、風邪症状でもクシャミや鼻水などのアレルギー症状の改善に処方される。ところが、エキス剤を飲んでも効果が表れない人も多い。こんなとき、お湯に溶かして飲むとよく効くことがある。

中国ではまだ、煎じ薬が主流だ。エキス剤をそのまま飲んでいる人は、一度お湯に溶かして煎じ薬に近い飲み方をしてみてはいかがだろう。