『第280話』 軟膏など塗りひび割れ防ぐ

冬は皮膚が乾いて、小さなひび割れができやすい。特にお年寄りの皮膚は乾きやすく、かゆみを伴うことも多い。

皮膚は表皮、真皮、皮下組織の三層で構成されており、表皮の一番外側にあるのは角質層と呼ばれる、ごく薄い膜だ。角質層には水分を吸収しやすい性質のセラミド、アミノ酸、尿素など天然保湿因子と呼ばれる成分が存在して皮膚に潤いを与えている。

角質層の水分は通常5~15%ほどだが、汗をかいたりした後は40%にも達する。スポーツの後やおふろ上がりに肌がつやつやして見えるのはこのためだ。

角質層は絶えず新陳代謝を繰り返す。次々に新しい細胞と入れ替わり、古くなったものは1カ月ほどで垢(あか)となってはがれ落ちる。このサイクルは部位によって異なり、足の裏では3カ月ほどかかる。

年を取るとともに皮膚の新陳代謝は不活発となり、角質層は薄くなり、そこにあった保湿因子の量も減って皮膚を潤す水分は少なくなる。そのため皮膚の弾力性がなくなり、ちょっと刺激を受けただけでかゆみを生じやすくなる。

保湿効果を長く保つには、ワセリンのような脂分の多い軟膏(なんこう)を塗って水分の蒸発を防ぐことが最もよいが、ベタベタするので敬遠する人も多い。

その点、クリームはべたつき感がなく、すぐに皮膚に滑らかさを与える。角質層に存在するアミノ酸や真皮に含まれるコラーゲン、ヒアルロン酸などの保湿成分を配合したクリームもあり、皮膚の外から保湿性物質を補うこともできる。手のひらや足の裏など角質層が厚く硬くなっている所には、尿素を含んだ軟膏がよい。

肌が乾燥しやすい人は1日に数回クリームを塗り、部屋の温度は22、3度ほどに保ち、湿度は50%以上になるように心掛けてほしい。