『第282話』 血液製剤使用後、体の異常確認を
血液は医薬品の中でも特殊な存在だ。献血で得られた血液からは、さまざまな血液製剤が作られている。
人の血液量は体重の13分の1。50キロの人には3.8リットルの血液が流れている。この血液の中にはさまざまな細菌やウイルスが存在している可能性がある。
かつて梅毒、肝炎、エイズが輸血によって感染し、社会問題になった。献血の前に問診を行い、献血液を検査し、細菌の有無を確認して感染の危険を極力少なくしている。しかし、自分で気付かないうちに感染していることもあり、製剤化する工程で細菌やウイルスの感染力をなくすことが常識となっている。
新鮮血が必要な場合にはこうしたリスクが常に伴っていると考えなければならない。
エイズや成人T細胞白血病ウイルスは、加熱処理するなどして感染力をなくすことができる。しかし、加熱処理やフィルターによって除去できないウイルスもいる。
小児に伝染性紅斑(こうはん=リンゴ病)を、成人には多発性関節炎を起こす「パルボウイルスB19」による輸血後感染が最近、多く報告されている。血液製剤がこれに高い率で汚染されている可能性があることが指摘されている。
パルボウイルスB19は極めて小さく、熱に対して抵抗性がある。身近に存在しており、感染したことを知らないうちに治っているケースが成人で60%程度あるとされる。予後も良好で比較的危険性の低いウイルスだ。しかし、妊婦では流産や胎児死亡の原因となることがある。また、免疫不全患者では持続性の貧血を引き起こすことがある。
血液製剤を使用した場合は発熱、発疹(ほっしん)、関節痛がないかを確認することが必要だ。