『第284話』 薬服用中の場合、歯科医に相談を
年を取ると、入れ歯の作製や調整、むし歯を抜くためなどで歯科医に世話になる機会が増える。
高齢の人から電話があり「抜歯したら出血が止まらない」という相談を受けた。「下手な歯医者だ」と怒りをぶちまける。「あまり怒らないで」となだめながらよくよく話を聴くと、この人は脳梗塞(こうそく)の治療中で、予防薬を服用しているという。本人は病気を知られたくないために、歯科医にこのことを全く話していなかった。
服用してい薬はワーファリン。血液が固まらないようにする血栓予防薬だ。出血が止まらないのは薬の作用のためで、歯科医に手落ちがないことを説明し、治療を続けるように説得した。
血液を固まらせないようにする薬はこのほか、アスピリン、塩酸チクロピジンなどがある。こうした薬を服用している場合、そのことを話しておかないと、適切な処置を受けられず、思わぬ事態を招いてしまう。
歯科医には秘密を守る義務がある、患者の秘密を漏らすことはないので、服用している薬があれば、隠さずに話すことが必要だ。
抜歯時にトロンボテスト(血液が固まる時間を調べる検査)値が低くても、正常人の12%あれば、縫合などの局所処置で対応できる場合もある。
肝硬変など肝機能障害があると、血液の凝固能力が低下していて、血が止まりにくくなることもある。この場合も歯医者に話すことが大切だ。
歯医者からもらう薬は鎮痛剤、消炎剤、化膿(かのう)止めなどがある。整形外科でも鎮痛剤、消炎剤をよく処方する。化膿止めは抗菌剤なので、風邪やほかの傷の治療のために出される薬と同じ場合がある。複数の病院に通院する場合は、こうした薬を重複して服用しないように、事前に話しておくことが必要だ。
飲んでいる薬の作用が分からないときは、医師や薬剤師に問い合わせて記録し、診察のときに見せるようにしたい。