『第285話』 疲労の回復には軽い有酸素運動

疲労のとらえ方は人によってさまざまだ。常に疲れたと感じている人もいるし、回復力の早い人もいる。

激しい肉体労働やスポーツの後の筋肉には、乳酸という物質が発生してくる。乳酸が増えると、筋肉は酸性に傾く。筋肉は中性からアルカリ性の時、効率よく働くことができる。酸性になると、その活動は低下してしまう。「ヘトヘトでもう動きたくない」などと思うのはこうした場合だ。

筋肉を動かすエネルギーとなるのは、肝臓や筋肉に貯蔵されているグリコーゲンが分解されてできる「アデノシン3リン酸(略称ATP)」という物質だ。分解時に十分な酸素があると、グリコーゲンは完全に水と二酸化炭素になる。

筋肉はATPを少量しか蓄えることができない。そのため、細胞はグリコーゲンを分解してATPを作り、水と二酸化炭素にするという作業を延々と続ける。これが高校の教科書でもおなじみの「TCAサイクル」と呼ばれる現象だ。

このサイクルを促進させる物質が各種のビタミンである。ビタミンが不足したり、効率よく酸素を取り込むことができなかったりすると、グリコーゲンはうまく分解されずに乳酸ができてしまう。疲れた時に飲むドリンク剤にビタミン類が多く配合されているのは、こうした理由による。

酸素が十分にあると、乳酸も脂肪などと一緒に燃えてエネルギーを生み出し、水と二酸化炭素になる。従って、ヘトヘトになってもそこでやめずに軽い運動をすると疲れは残らず、脂肪も燃焼させることができる。

「疲れたらとにかく寝る」という人も多いようだが、1日10時間以上の睡眠は血液循環が悪くなり、起きてからもボーっとしたり、気分がうつ状態になったりしやすい。1日の睡眠時間は7、8時間が適当だ。また、昼の15分の仮眠は夜中の2時間に匹敵するくらいの効果があるといわれる。