『第287話』 成分が同じでも銘柄により格差

同じ薬を同じ量服用しても、すべての人に同じ効果が表れるとは限らない。性別、年齢、体重、体質、消化機能、排せつ機能、そのほかさまざまな身体的な違いや人種差などによって薬の効果は違ってくる。

一方、異なった製薬会社から、有効成分が全く同じ薬が発売されている。それぞれの製薬会社は独自の製剤技術を持っていて、これは企業秘密になっている。個々にその有効成分を見ていくと、医薬品を合成したときの結晶構造の違いや、医薬品を粉末にするときの技術差などが原因となって製品に微妙な違いが生まれる。このことを「銘柄間格差」という。

薬が体内に吸収される度合いを調べ、総合的な評価を行う方法に生物学的利用率(バイオアベイラビリィティー)を見る方法がある。実際に人に薬を服用させて、血液中の薬物量を測定し、最高濃度に達するまでの時間や濃度、吸収された総薬物量を調べる。条件が複雑にからみあった医薬品の評価を行うことは容易ではない。その人に対する服用量を決定できても、銘柄間の差を見るためには、相当のデータが必要となる。

狭心症に使うジゴシンは錠剤と液剤とで生物学的利用率が違い、また、喘息(ぜんそく)に使うテオフィリン製剤は銘柄間格差があることが知られている。

生物を用いる試験は倫理的な問題がある。銘柄間格差を見るためには、溶出試験法という分析法で代用することが、ある程度できる。

厚生省は2月から副作用の情報収集と合わせ、医薬品の品質が保健衛生上、著しく不当な医薬品を排除して品質の一層の確保を図るため、製薬会社にデータの提出を求めている。

大衆薬を購入する場合でも、薬局・薬店でその品質を確認することが必要だ。