『第289話』 尿と便の色変化、薬や食事が影響、
薬によって尿の色が変わることはよく知られている。ビタミンB群を多く含んだドリンク剤を飲むと尿がいつもより黄色くなるのは身近な例だ。
便秘の薬であるセンナは、体内で化学変化を起こして尿を赤色に変色させる。前もって説明を受けていないと血尿が出たと思う人もいるくらいだ。
逆に下痢の時によくお世話になるクレオソートでは、尿が暗緑色に変わることがある。パーキンソン病に用いるレボドパという成分を含んだ薬では排尿後、尿を放置しておくと黒色に変化する。
その他、咳(せき)止めのヒベンズ酸チペピジンでは薄い赤色、肩凝り解消などに使われる筋弛緩(しかん)剤のクロルゾキサゾンではだいだい色に変わる。一般に市販されている薬の中にも尿の色を変える成分は多いので、何か気になる変化があったときは薬剤師に相談してほしい。
薬の服用をやめると尿の色は元通りになる。薬をやめたにもかかわらず尿に着色があるときは、病気の場合もある。
尿に限らず便にも色の変化は起こる。ただし便は食事の影響を受けやすい。例えば、貧血治療のために鉄剤を飲むと、鉄が胃酸と反応して塩化第一鉄となり、便を黒くする。鉄分を含むホウレンソウをたくさん食べたときも便は黒っぽくなる。
胃や腸で出血が起こるとタール便と呼ばれる墨のように黒い便やコールタール状の便が出る。こちらは血液中のヘモグロビンに含まれる鉄が反応するためだ。
この鉄は胃酸と反応してヘマチンという物質になったり、腸内細菌が作り出す硫化水素と反応して硫化鉄になる。これが黒い色の成分だ。こんなときは胃かいようや十二指腸かいよう、食道静脈瘤(りゅう)破裂などの可能性が考えられるので要注恵だ。