『第293話』 服用方法次第で、思わぬ副作用も

薬を患者さんに正しく使ってもらうこと、それは薬の安全性が確保されることでもある。

もともと一つの効果しか持たないような薬はない。風邪薬を飲めば眠くなるし、解熱鎮痛剤を飲めば胃が痛くなるといった作用を切り離すことはできない。

薬は多面的な薬理作用を持っているが、その中でも際立って表れる作用を病気の治療に利用していく。それらは薬効あるいは主作用と呼ばれ、期待外の作用は副作用と呼ばれている。

医薬品として認可された薬であるならば、効果が期待される最少量を飲んだ時、薬効の前に副作用が出ることはない。服用量が多くなるにしたがって主作用以外の作用も多く表れてくるのが一般的だ。

体内に薬が多く存在する要因として考えられるのは服用量や服用回数の間違いなどである。

また肝臓の機能が弱っている人は薬の代謝が遅れ、いつまでも薬が体の中に残っているところに、次の服用時間がきてしまうといったことがある。

アルコールが薬の作用を強めることはよく知られているが、アルコールはお酒に限らず、市販のドリンク剤にも含まれていることがある。

他の薬物との相互作用はもとより、カルシウム拮抗(きっこう)剤とグレープフルーツジュース、抗凝血薬と納豆、クロレラ、ブロッコリー、キノコ類など食品との食べ合わせによっても薬の血中濃度が変化し、思いがけない副作用が出ることがある。

死につながるような副作用は交通事故に遭う確率よりもはるかに低いが、重大な副作用につながる時、体はサインを出してくる。

副作用による死亡例の場合、皮膚障害が認められる率が高い。薬を飲んで発疹(ほっしん)や掻痒(そうよう)など皮膚に異常が生じてきたときは直ちに服用をやめるべきだ。