『第295話』 薬の適正使用で飲み残し一掃を

飲み残しの薬が多いという話はよく聞く。

先日も、末期のがん患者が再入院することになり、飲み残した薬の処分に困った家族が薬局に相談に来たという話を聞いた。薬局のカウンターに広げられた飲み残しの薬は「MSコンチン」250錠、その他にも10種類以上の薬が処方されていて、これも相当量飲み残しがあったという。

MSコンチンの成分は強力な鎮痛作用を持つ硫酸モルヒネで、昔からアヘンとして知られる麻薬の有効成分だ。この薬のおかげで、痛みの激しいがん患者でも在宅での治療が可能になった。

医療機関における麻薬の管理は厳重で、250錠も紛失したら行政処分ものだ。しかし、いったん薬として患者に渡ると、医療上必要なものとされ、患者が服用する限りにおいて、法律上の束縛はない。結局、このケースでは法律上の決まりはないが、社会的な影響度を考慮して、保健所の立ち合いのもとで廃棄処分された。

不思議なのは、相当に痛みが激しかったはずなのにMSコンチンやその他の薬が服用されていないことだ。痛みがないのであれば、医療機関が漫然と薬を処方し、薬局での服用状況のチェックを怠っていたと言われても言い逃れはできない。患者への治療に必要な理由や効果についての説明が十分になされず、理解を得ていなかったことも考えられる。

副作用だけを強調して説明すると、患者がより不安を募らせてしまい、薬を服用しなくなってしまうことがある。副作用があっても、これを十分に考慮しながら薬を服用しなければ治るべき病気も治療できない。また、服用していないことを患者が医師や薬剤師に伝えない場合もある。

医療費から考えると、麻薬は管理が難しく、これに掛かる経費が考慮されていて、相当に高価だ。MSコンチン1錠当たり10ミリグラム錠で289円、30ミリグラム錠だと787円、60ミリグラム錠であれば1,479円だ。250錠ともなれば60ミリグラム錠で37万円にもなる。服用しないで廃棄すれば、医療費の無駄遣いと言われても仕方がない。

医療機関・薬局側でも反省すべき点は多いが、服用状況や服用した結果などを積極的に伝えることで、医薬品の適正な使用にご協力を賜りたい。