『第299話』 サルモネラ菌の食中毒に注意を
梅雨に入り、食中毒が懸念される季節となった。昨年はO157でほかの原因菌による食中毒はほとんど話題にならなかった。
今年の食中毒はサルモネラ菌によるものが多くなるという予想が発表された。食中毒の原因菌で多いのは腸炎ビブリオ、ブドウ球菌の順で、第3位がサルモネラ菌によるものだ。
自然界のあらゆる生物や場所にいて、特に鶏の卵管部を好む。サルモネラ菌はチフス菌やパラチフス菌Aの仲間。食中毒を起こすのはサルモネラ・エンテリティディスやサルモネラ・チフィムリウムだ。
サルモネラ菌が腸管に入ると小腸表面にある上皮細胞に取り付いて、細胞の中に入り込む。さらに奥に侵入し、基底膜という部分までたどり着くと増殖を始め、腸炎を起こす。
O157のように外毒素を産生するわけではなく、菌体内に内毒素を持っていて菌体が壊れると、これが外に出て中毒症状が現れる。従って食中毒が起きるのは1,000万個以上の菌体を摂取した場合である。
肉類と鶏卵はサルモネラ菌による食中毒で注意しなければならない食品だ。卵の表面にサルモネラ菌が付いていることがあることはよく知られている。しかし卵の中にまでもサルモネラ菌が潜んでいる可能性があることが最近になって分かってきた。
加熱が不十分で、作り置きした卵焼きや自家製マヨネーズでは菌が増殖している可能性があり、要注意だ。新鮮な卵料理であれば心配する必要はない。
潜伏期間は8時間から48時間で発熱、頭痛、腹痛、下痢、おう吐の症状がある。下痢は水様性で粘液や血液が混ざることがある。衛生害虫と言われるハエ、ゴキブリも媒介するので害虫駆除が必要だ。
治療には、アンピシリン、バクシダールといった抗菌剤が使われる。食中毒の季節は、とにかく新鮮な料理を楽しむことだ。