『第309話』 数種ある心臓薬、疲労回復に効果
心臓は酸素や栄養素を含んだ血液を全身に送り出すポンプの働きをしている。
心臓が1回収縮すると約50~80ミリリットルの血液が全身を巡り、約12秒で再び心臓に戻ってくる。心臓が衰えて心不全の状態になると、血液が戻ってくるのに30秒ほどかかるようになり、酸素や栄養素が滞った細胞は元気がなくなり、体全体の機能が低下する。
心臓の薬には心臓の収縮力を強めて、動悸(どうき)、息切れを改善し、気付けとなる強心薬と呼ばれるものがある。これは即効性で、いわば心臓をむち打つような薬だ。
この強心薬なるものの1つに、昔から大道芸などでおなじみのガマの油の成分、センソがある。センソはシナヒキガエルの皮腺から出る分泌物で、もともとは毒だが、これを薄めて安全な量にしたものが市販されている。
生薬の附子(ぶし)にも強心作用がある。こちらも毒性が強いので作用を弱めた加工附子が八味地黄丸(はちみじおうがん)などに含まれている。
八味地黄丸は夜間、頻繁にトイレに行く人に効果がある。心臓の働きが鈍いと、日中は血液が多く腎臓に行かないために尿が出にくくなる。夜、体を横にすると血液が多く行くようになり尿が作られる。そのため、何度もトイレに起きることになる。
八味地黄丸の中の加工附子は心臓の働きを高め、日中にもよく尿を出すようにして夜間の尿を減らす。
また、人の心筋(心臓の筋肉)に存在する酵素の一種、ユビデカレノンは酸素不足に陥った心臓の酸素利用供給能力を回復させる。この製剤は即効性はないが、心臓を健康に維持するための予防薬として長く使える。
お年寄りの疲れにはこうした心臓の薬が意外に効果的な場合がある。