『第311話』 薬品の安全確認、環境整備が進む

サリドマイド、キノホルム、ソリブジン、血液製剤によるB型肝炎、エイズウイルスの感染など、日本は多くの薬害を経験してきた。今後の医薬品の安全性を確保するため、7月1日から厚生省は組織の再編を実施した。今までの薬務局は廃止となり、新たに医薬安全局を設置した。しかし、組織改革が行われても実体が変化しなければ意味がない。

特に医薬品承認時における情報の公開と客観的な評価体制の整備、諸外国から入手した情報の有効活用、市販後における副作用情報の収集体制の整備など諸外国と比べて立ち遅れている部分の具体的な改革が始まっている。

医薬品を開発する段階では毒性試験を実施したうえで、安全性を確認し、有効性を実証するための臨床試験に入る。過去には患者さんが知らないうちに治験薬(臨床試験段階の薬)を使われていたことがあったが、現在では文書で治験薬の使用に患者さんが文書で合意しなければ使うことができない。この臨床試験期間に集められた情報を整理し、医療用医薬品として発売したときに添付文書としてまとめ、専門家に情報提供される。

一般に使われるようになってから、さまざまな不都合なことが分かってくることもある。そこで、市販後に使用状況や副作用の状況などを調査して報告することが製薬メーカーに義務付けられている。このほかにも今までの副作用報告制度を見直し、新たな「医薬品等安全性情報報告制度」が7月からスタートした。

日本は諸外国に比べると医療関係者からの副作用報告などが非常に少ない。新しい制度ではすべての医療関係従事者に副作用などの報告を求めている。

また、この報告制度では医薬品と副作用の因果関係を特定しなくても報告することができる。情報を広く収集して解析することによって新たな副作用を発見できるからだ。

安全性を確保し、有効に医薬品を使用できる環境整備が進んでいる。