『第314話』 リウマチなどに劇的な効果示す
副腎皮質ホルモンは、ほかの薬剤では効かないリウマチや痛風、気管支喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などに劇的な効果を示す薬剤だ。
副腎皮質ホルモンはもともと人の体の中にある副腎皮質という所から必要に応じて分泌され、ホルモンとして体のさまざまな働きを調節している。
なかでも注目されるのは炎症を抑えたり、アレルギーなどの免疫系を抑える働きだ。
炎症を起こす原因物質は一方で胃の粘膜を保護するという作用を持っている。この原因物質を抑えるとリウマチや痛風の痛みからは解放されるが、同時に胃潰瘍(かいよう)が発生する可能性が出てくる。
また、免疫系を抑えるというのは裏返せば、細菌感染にかかりやすくなるということだ。従って細菌感染が原因の炎症には使用できない。
副腎皮質ホルモンは肝臓からのグリコーゲンを分解して血糖値を上げるため、糖尿病(インスリン抵抗性)の発現が懸念される。
また、脂肪組織から脂肪酸を遊離して、顔面や肩、腹などの皮下に異常な脂肪沈着を起こす。これが「ムーンフェイス」と呼ばれる、顔が満月のようになる副腎皮質ホルモンの特徴的な副作用である。
体が分泌する以上の副腎皮質ホルモンを外から加えると激しい炎症の苦痛からは逃れられる。しかしこれが続くと、やがて体は副腎皮質ホルモンを分泌するのをやめてしまい、副腎そのものが萎縮してくる。
副腎皮質ホルモンの効果を十分に発揮させ、全身への副作用を抑えていくために、皮膚には軟こう、喘息では吸入、関節リウマチでは関節への注射といった局所的投与が行われている。医師は投与計画を立て、短期間の投与で最も効果が期待できる薬物療法を行っているので、十分に説明を受けることが必要だ。