『第324話』 甘い誘惑を絶つ、人間教育が必要

覚せい剤、シンナー、麻薬などの薬物乱用に関する意識調査を文部省が初めて実施した。

高3男子の15.7%が「他人に迷惑をかけないので、使うかどうかは個人の自由」とし、「一度使うくらいなら心や体への害はない」と回答した5%を加えると容認派が20.7%にもなる。また、高校女子の8.1%がダイエットや眠気覚ましに効果ありと回答している。「使ったり、持っていたりするのは悪い」と考えている高2、高3の男子はわずか55%しかいなかった。

一部の教育現場には、問題が発生しているわけではないので、余計な知識を教える必要はないという風潮がまだ残っている。しかし、子供を取り巻く世界には興味をそそるのに十分な情報があふれているばかりではなく、乱用薬物そのものも入手可能な状態にある。

麻薬・覚せい剤、薬物乱用の防止を「ダメ、ゼッタイ」と叫ぶのには理由がある。それは、他人に迷惑をかけ、自分自身を肉体的、精神的、社会的に廃人にしていくからである。何となく気にもせず、たった一度のはずだった薬物使用がやがて常習となり、覚せい剤や麻薬を購入する資金を得るため、売春や強盗殺人を繰り返すようになる。こうした事件が毎日のように報道されているのを知っているはずだ。

覚せい剤は1回の使用で薬物依存性を生む。依存性から抜け出すためには専門家の治療が必要だ。

自分自身には関係ないと思う心にスキがある。人の心は弱い。社会のストレスから逃避するために、快楽を求め、幻想におぼれる。その心の弱さを自覚する必要がある。

薬物乱用のことを考えるとき、ささいなきっかけが人の運命を左右していくありさまを「ほんの浮気で漕きだす船も風の吹きよで命懸け」と詠んだ僧りょの歌を思い出す。

ささいなきっかけをはっきり明確に断ることができる人間を育てる教育や、若者たちに麻薬や覚せい剤について正しい知識を地道に啓もうしていくことが必要だ。