『第325話』 ヨウ素入りの塩、途上国に送ろう

年末になると、ユニセフ(国連児童基金)から1年間の活動報告が送られてくる。

開発途上国では今でも栄養不良で命を落とす子供が多い。食糧がなかったり、仮にあったとしても栄養が偏っていることもある。栄養状態が悪いと、十分な成長ができず、体力もないため簡単に感染症にかかって死んでしまう。

ユニセフが推進している活動の1つに「かしこい塩」運動がある。

「かしこい塩」とは塩の中にヨウ素を加えたものだ。ヨウ素は海水の中に豊富に含まれ、海産物を摂取する日本人はヨウ素欠乏症が起こりにくい。しかし、海から遠いアフリカやネパールなど、大陸の奥地や山岳地方に暮らす子供たちにはこの病気が多く発症する。

ヨウ素は首の前側にあるわずが20~25グラムほどの甲状腺(せん)に特異的に集まり、甲状腺ホルモンの原料となる。

甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を促進する働きがあり、また胎児や出産後1~3カ月の乳児の大脳発達にも大きくかかわっている。この時期に母親を通してヨウ素が十分に供給されなかった子供たちには知能の遅れや発育障害を伴うクレチン病が発病してくる。

甲状腺ホルモンが欠乏すると、体のエネルギーを効率良く使うことができず、運動機能の低下を招く。

日本人の場合は成人1日あたりのヨウ素必須(ひっす)量の10倍以上を摂取しているといわれ、逆にヨウ素の過剰摂取に注意が必要になる。

ヨウ素欠乏症を防ぐにはヨウ素を添加した塩を料理に使うだけでよい。このヨウ素入りの塩は非常に安く、5,000円もあれば800人の子供に1年分のヨウ素を供給できる。

ほかにも貧しい食事による弊害は多い。ビタミンAの不足で失明する子供は年間50万人もいる。わずかな金額でも、多くの子供を病気から守れるとユニセフでは訴えている。

1年間つつがなく生活できたことを振り返るとき、同じ地球上に生きる者として、わずかだが募金を通して国情の違いを学び、問題意識を持って協力していく姿勢を育てたいと思う。