『第329話』 シンナーの毒性、小中生に周知を

年明け早々に5歳の女児が通り魔に刺殺される事件が大阪府堺市で起こった。一緒にいた母親と登校中の女子高生も刺され、重傷を負った。逮捕されたのはシンナーを常習していた19歳の少年だった。

シンナーとは有機溶剤の一般的名称で、シンナーという名称の有害成分があるわけではない。英語でTHI

薄める)、

R(物)という意味だ。

シンナーの成分は、トルエン、アセトン、キシレン、酢酸エチルなど異常に多くの成分を含み、塗料や希釈する対象物によって、含有する成分を変えて使用する。

急性的な効果は中枢神経に対する抑制効果で、酩酊(めいてい)から麻酔に至る意識の低下が起こる。いわゆるラリった状態になる。また、狭い場所で高濃度の吸引を続けたために、呼吸麻痺(まひ)を起こし、死亡する事故がしばしば起きている。

長期にシンナーを吸引し続ければ、大脳皮質の委縮と脳室の拡大が起こる。この状態をCTスキャンで撮影すると、あたかも脳が溶けているように見える。この脳の変化は不可逆的な変化で、元に戻ることはない。脳の委縮は、運動障害、視野が狭くなるなどの視力障害、けいれんを起こし、人格を破壊する。このほかにも造血障害による貧血や肝機能障害を引き起こす。

特に5年以上、シンナーを乱用している者では、幻聴・妄想などの症状を有する有機溶剤精神障害の発生率が高くなり、このような事件を起こすことになる。

最近、麻薬や覚せい剤、薬物などの乱用が低年齢化してきていることを考えれば、小・中学校教育の中で、脳が委縮している写真や人体への影響などを具体的な資料を示し、シンナーなどの毒性を説明していくことが必要だ。

薬物乱用防止の掛け声は自分自身にも向けられていることを忘れてはならない。