『第348話』 第三者の薬品テストに注目

薬事法第二条に薬の定義が載っている。その1つに人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされるものであって、器具機械でないものというのがある。治療などに使用する以上は確実な効果と結果が求められる。厚生省は医薬品製造承認の過程で多くの臨床データを製薬会社に収集させて、このことを確認し、審査する。また、医薬品が市販された後、安全性と有効性のデータを製薬企業に収集させて再審査を行っている。

5月20日、厚生省は脳循環代謝改善薬4品目の医薬品承認を取り消した。厚生省は、承認時において薬理効果および医療上の有用性が認められたとしていた。しかし、提出データでは脳梗塞(こうそく)、脳出血による後遺症(意欲、自発性の低下、抑うつ気分などの情緒障害)に対して試験薬群では30%前後の改善が見られたものの、対象成分を含まない薬を服用させた群と比較して、改善率に有意な差はなかった。

こうした薬物効果の判定は特定の医薬品のみについて行われていて、範囲を広げて総合的な効果判定を行えるまでの段階に至っていない。

現在使用されている医薬品の市販後における情報収集には、医薬品安全性モニター制度と製薬企業が行う市販後調査がある。これにも問題があって、医療従事者の自発的な報告がなければ副作用などを十分に把握できない、副作用発生率が求められない、他社製薬企業との使用成績を比較できないといったことが指摘されている。

そこで、新たに処方イベントモニタリング(PEM)という行政や製薬企業から独立したかたちの情報収集と解析方法の研究が進められている。医療従事者がネットワークをつくり、第三者機関がまとめ役となって、テストしたい医薬品と標準医薬品群を対象に、どのような事象が起こっているのか、医薬品との因果関係を問わずカルテや薬歴に記載された事項をまとめて評価しようとするものだ。

技術の進歩や使用している医薬品の情報を集めて適正に判断することによって、使用する医薬品が異なってくるはずだ。そのためにも、処方イベントモニタリングに注目していきたい。