『第349話』 大麻吸引で必ず障害

麻糸は強く、それで織られる麻布は清涼感もあって夏の衣類には欠かせない。

麻は人類が繊維をとるために栽培した植物の一つで、大麻とも呼ばれる。古来より日本人にとっての麻は衣類のほか、漁網、畳糸、蚊帳(かや)、げたの緒などの日常品から神祭に使われる幣帛(へいはく)、注連(しめ)にも用いられ、われわれの生活や文化に深くかかわってきた。

現在も栽培農家が多い栃木県鹿沼地方には、昔から馬を麻畑につなぐと馬が発狂するという言い伝えがある。1800年ごろの書物に、ある寺で麻の葉を食べた小坊主たちが大騒ぎをし、狂っては仏具を壊し、正気を失ったり、血を吐いたりしている様が記述されている。

麻の普及に伴い、その毒性が知られるようになったが、化学的解明が行われたのは19世紀に入ってからだ。大麻は麻酔作用や幻覚作用を持つ成分、毒性の強い成分などが混在し、それらの含有量は栽培地によって異なる。

大麻は麻薬であり、昭和21年に連合軍の指示でいったんは大麻の栽培を全面禁止させられた。しかし日本での麻の需要は多く、またこれほど生活に身近な植物でありながら、特に大麻乱用による社会的問題が生じてこなかったことから、1948年「大麻取締法」が制定され、栽培が許可制になった。

大麻を吸引すると、知覚が敏感になり幻覚が現れる。このため一部のアーティストたちが惑わされて使用する傾向にあるが、精神的パニックに陥ったり、錯乱状態になることもある。人体に無害であるようなことは決してなく、幻覚や幻視、幻聴を繰り返すうち記憶力の減退と混乱が生じる。やがて脳の構造自体が変化して記憶力、思考力、理解力など知的活動に障害が必ず起こる。

大麻の不正栽培は罪が重く、大麻の双葉が出ただけで、7年以下の刑だ。また所持などについても罰金刑はなく、懲役刑のみである。