『第353話』 牽牛の意味はアサガオ

7月7日の夜に、年1回わし座の牽牛星(けんぎゅうせい=アルタイル)とこと座の織女星(しょくじょせい=ベガ)が出合うとされている。

牽牛とは中国名でアサガオを意味する。アサガオは中国から渡来し、日本では主に鑑賞用となっているが、4世紀ごろの中国では薬用として珍重されていた。牛を牽(ひ)いて市場に行き、アサガオを手にして帰ってきたことから、アサガオは牽牛と呼ばれるようになった。牛1頭と交換とは当時のアサガオがかなり高額であったことがうかがえる。

主に薬用となるのはその種子で牽牛子(けんごし)と呼ばれ、下痢、利尿、駆虫や浮腫(ふしゅ)に使われた。

日本では江戸時代にアサガオ栽培のブームが起こり、人々の情熱は薬ではなく品種改良に注がれ、今では失われている黄色のアサガオも存在した。

さて、織女は布を織る女性のことだ。七夕の日に願い事をすると必ずかなうという伝説は中国伝来のものとされている。

一方、日本における「たなばた」は棚機という字を当てて織女を意味し、水神を迎える儀式として行われてきた。

日本には水辺で神にささげる布を織る棚機女(たなばたつめ)という女性がいたという。こちらも年に一度、水神に会うために水辺の小屋に閉じこもってひたすら機を織っていた。この伝説と中国の天の川伝説がうまく溶け合って、日本で行われる七夕の行事が生まれたと国文学者、折口信夫は述べている。

七夕に竹を立てるのは、竹という植物が神に関係しているからだ。正月の門松、六郷町の小正月行事竹打ち、地鎮祭などさまざまな神霊行事に竹が使われている。

竹に殺菌力があることは古くから知られているが、その抗菌力を持つ物質ベンゾキノンが分離されたのはつい10年ほど前のことだ。