『第355話』 噴霧式傷薬の使い方
パウダースプレー式の殺菌消毒薬が手軽に使えて、人気を呼んでいる。
しかし、使い方を誤るとかえって傷を悪化させる原因になるので注意が必要だ。
パウダースプレー式の殺菌消毒薬は殺菌消毒薬が粉状に付着して、傷口の乾燥を早め、傷口を保護する特徴を持っている。しかし、このことがかえって傷口を悪化させてしまう原因ともなっている。
1993年11月に最初の事故例が報告されてから現在までに31件の報告がある。事故の内容は「傷口が化のうして、ひどくなった」「凍傷(低温やけど)になった」というもの。
薬に添付している説明書には、「使用に先立って傷口の泥などの汚れを水できれいに洗い流すこと」と書いてある。これは、洗浄が不十分のまま使用すると、残っていた細菌を閉じ込めながら粉状の殺菌消毒剤で傷口を覆うことになり、内部で細菌が増殖して化のうすることになるからだ。また、固まった薬は落としにくく、2回目以降の使用はこれを十分に取り除かないと内部まで殺菌することができない。重ね塗りは効果がないと思ってもらいたい。
取りにくくなる原因に、滲(しん)出液や出血があって消毒剤を付けても乾燥しないのは薬の量が足りないと思い、過量にスプレーしがちになることがある。過量に使用すると固着して取りにくくなる。
厚く固着すると外から観察しにくくなり、内部で悪化していても分からずに手当てが遅れることになる。
凍傷を起こしているのは、スプレー式にするためにLPガスが使われているためだ。説明書には患部から10センチ以上離して使用するように書いてあるが、近づけて噴霧し続けると皮膚から気化熱を奪い、皮膚を凍結させて凍傷を起こす。
既に、県内の薬局・薬店には消費者が購入する際に、情報提供できるように連絡してあるのでパウダースプレー式の殺菌消毒薬を購入するときには十分に情報を入手し、正しく使用するとともに、患部周囲の赤みが増したり、違和感、痛み、発熱感があれば使用を中止し、医師に診せることが必要だ。