『第392話』 自分勝手な薬の調節は危険
症状があるということは、病気であるという自覚を生む。これにより私たちは積極的に治療を受けようとする。
しかし、特に症状がなくても薬を服用しなければいけない場合がある。それは将来起こるかもしれない疾患を予防するためだ。
例えば、血圧が高くても、頭痛やめまい、吐き気などといった症状を伴わず、単に数値だけが高いという人がいる。このような人は遺伝的に普通の人より常に血圧が高く、本態性高血圧ど呼ばれ、それ以外には何の症状もない。
だからといって、これをほっておくわけにはいかない。血圧が高い状態のままいると、やがて脳や心臓、腎臓(じんぞう)などの臓器に障害をもたらすことは必至だ。たとえ病気の自覚がなくても、血圧降下剤を長期間服用する必要がある。
また、一生懸命食事を工夫しても、いっこうに中性脂肪やコレステロールの値が下がらないという人もいる。
血液中の脂質の値が基準値より高くても、そのためにどこかが痛い、苦しいということはない。しかし、このままでは動脈硬化が起こりやすくなり、ひいては脳出血や心筋梗塞(こうそく)の原因にもなる。
このような場合も、血液中のコレステロールを下げる薬を服用しなくてはいけない。薬をやめると数値が上がるというケースでは服用は長期間にわたる。
長い間服用していると、体に合っていたはずの薬でも効果が今一つだったり、かえって具合が悪くなったような気がすることもある。そのようなときは、正直に医師や薬剤師に報告してほしい。自分勝手に薬の量を調節したり、薬をやめたりするのは非常に危険だ。
薬は吸収され、全身に運ばれて効果を表した後、代謝されて体外に排せつされる。この働きは加齢や身体の状態とともに変化してくる。
脱水症状とまではいかないまでも、体内の水分量が変化すると、薬の分布に変化が起こってくる。
また、消化管にむくみ(浮腫=ふしゅ)があると薬の吸収は阻害される。
薬は肝臓で分解、解毒され、胆汁(たんじゅう)として便の中に排せつされたり、腎臓から尿へと排せつされる。肝臓や腎臓がうまく機能していないと、使用済みの薬が体内にとどまって有害反応を表すこともある。
薬と長く付き合うには、薬をよく知ることが大事だ。また、薬を飲んでいるからと安心せず、健康増進のためにも食事、運動、睡眠などに気を配ってもらいたい。