『第356話』 未承認薬のバイアグラ

クエン酸シルデナフィル、これが今話題となっている「バイアグラ」というインポテンス治療薬の成分名だ。

医療用医薬品の宣伝は医療関係者のみに限定されていて、一般の書籍には掲載できない。輸入雑誌にはこうした国内規制の手が届かないため、医療用医薬品の広告が掲載されている。しかし、そこには日本の一部の週刊誌が取り上げたようなセンセーショナルな宣伝の仕方ではなく、治療効果のほかに、日本ではこれを読んだら服用しなくなってしまうのではないかと思われるような副作用が事細かに書いてある。

バイアグラは今年の3月にFDA(米国食品医薬品局)が認可した医薬品で、日本では治験が行われている段階だ。つまり、日本ではまだ医薬品として認可されていないということだ。

この中間的な位置づけにある物質について、15日に厚生省は異例の安全性情報を通知し、3例の死亡報告例をインターネットのホームページに掲載した。内容は、心臓の冠動脈を拡張するニトログリセリンを併用した相互作用による死亡例、友人からもらったバイアグラを服用後に死亡した例、服用3時間後に死亡したが原因が特定できない例だ。日本でも最近、死亡例が発生している。

米国では5月に6例の死亡報告が行われていて、FDAは適正使用と禁忌の徹底を呼び掛けている。通常、6例もの死亡例が報告されると厚生省は緊急安全性情報を通知する。過去には、抗がん剤と抗ウイルス薬の相互作用によって死亡者が出たソリブジン事件などがある。

バイアグラは米国において医師の診断、管理下で、患者への十分な説明が行われた後に使用される薬剤であり、安易な個人使用は安全性の観点から問題がある。

薬害防止が叫ばれ、医薬品承認申請の内容が公表されるようになってきた。有効性と安全性が確認できれば、日本においても医薬品として使用できるようになる。特効薬という見出しに扇動されることなく、冷静に状況を判断してもらいたい。