『第362話』 日本人と寄生虫の付き合い
若い人に寄生虫って何、と聞いたら「忌み嫌われている人」という答えが返ってきた。確かに、あまり良い意味に使われることはないが、「虫酸(むしず)が走る」「虫の居所が悪い」「虫の知らせ」「虫が好かない」と日本人の日常生活と密接な言葉が思い浮がぶ。これほど日本人は昔から虫、寄生虫との付き合いが長いことがうかがわれる。事実、最近まで寄生虫が腹の中にいて当たり前、という時代があった。
県内では、1960年に八郎潟横川騒動というのがあった。県寄生虫予防協会が八郎潟周辺の小学校児童の検便を実施したところ、児童の20~50%に横川吸虫を検出したというものだ。
一口に寄生虫といってもさまざまなものがある。皮膚表面に寄生する毛ジラミやノミなどの節足動物、マラリアやトリコモナスの原因となる原虫などだ。一般的に寄生虫というと小学生のころ検便を行った蟯虫(ぎょうちゅう)や回虫などを連想することだろう。最近では、エイズ(後天性免疫不全症候群)によって日和見感染を引き起こす、ニューモシスチス・カリニ、水質汚染が問題となっているクリプトスポリジウム、激しい胃痛を引き起こすアニサキスなど身近な話題に事欠かない。
人の体内に寄生する寄生虫には原虫と蠕虫類(ぜんちゅうるい)がある。原虫は単細胞だが、蠕虫は多細胞だ。蠕虫類はさらに線虫類、吸虫類、条虫類に細分類している。蠕虫や回虫は、線虫類に分類する。
寄生虫の治療薬はその種類ごとにさまざまな薬がある。学校の保健室で飲まされた甘いシロップ液は虫体を麻痺(まひ)させて動けなくしてしまうピリミジン誘導体系のものだ。ベンツイミダゾール誘導体系のものは蠕虫がブドウ糖などの栄養素を取り込むのを阻害して駆虫する。
寄生虫病は加工食品の輸入増加やゲテモノ食いと称する日本人が通常食べない動植物の生食、ペットブームによる人畜共通感染症の増加、人糞肥料を用いた有機栽培などによって増加傾向にあるので注意が必要だ。