『第365話』 GEの品質検討始まる
【医薬品の品質(下)】
医薬品の品質を常に良質に管理していくことは大変難しい。
最近、話題となっているのは同一成分の医薬品銘柄間における治療学的同等性の問題だ。つまり、成分がまったく同じ医薬品でも、銘柄(商品名)が異なる医薬品が多数の製薬企業から発売されていて、それぞれの治療効果がすべて同じなのだろうかという疑問だ。例えば、ジクロフェナクナトリウムという成分の消炎鎮痛剤は26種類の銘柄の異なる医薬品が発売されている。
業界用語に“ゾロ商品”という言葉がある。通称ピカ新といわれる新薬の先発権や特許権が切れると、ゾロゾロと出てくるのでゾロ商品と呼ばれている。また、新薬の化学構造に手を加えた“ゾロ新”といわれる医薬品もある。
薬には薬価と呼ばれる公定価格があって、ゾロ商品は一般に薬価が低い、つまり安いということだ。過去には、薬価差益といわれる医薬品納入価と薬価の差がゾロ商品の方が大きいということがあった。
また、疾病ごとに一定の医療費が支払われる包括医療制度の拡大によって、安いことだけで医薬品を選択してしまう可能性が生まれてきている。
今もこれらの傾向があるが、現在はこのことよりも、患者さんの経済的負担を軽減するために、治療効果の同等性を確認して、安価な医薬品を有効に使っていけないかということが検討されている。このために、ゾロ商品とか後発品という名称をやめ、ジェネリック・ドラッグ(GE)という名称を使い始めている。GEとは商標登録をしていない薬という意味だ。
手元に表紙がオレシジ色の本がある。米国の「オレンジブック」といわれている本だ。米国では患者さんが薬局に処方せんを出すだけではない。積極的に医薬品に関する情報を薬剤師に求める。医薬品の価格についてもだ。この本には先発医薬品とGEについての同等性を評価したランク付けが載っている。患者さんはどの銘柄の医薬品を使うのか、その評価と価格を比較しながら自分自身で使う薬を薬剤師と相談して決めていく。
日本でも、品質の再評価を行う事業が始まっている。厚生省は昨年2月に12成分、今年7月に16成分を指定して、平成16年までに550成分について検討を行う計画だ。
先の長い話だが、治療効果対費用効果に関する問題に解答を求めようとしている。