『第368話』 動脈硬化防ぐ赤ワイン
フランス料理では、肉料理に赤ワイン、魚料理には白ワインというのが定番かつ作法だったが、今では、これにとらわれなくなった。しかし、やはり肉には赤だという理由が最近解明されつつある。このことが昨今の赤ワインブームの火付け役となった根拠ともいえる。
以前から医学界で「フレンチパラドックス」と呼ばれる不思議な現象があることが知られていた。パラドックスとは矛盾とか逆説などと訳される。「フランス人の矛盾した現象」とは何か?
フランス料理はほかの料理に比べて動物性脂肪が多い。1年間の肉消費量が世界で最も多いのはフランスだ。さらにフランス人の喫煙率は高く、通常、これらの条件がそろえば動脈硬化に起因する心筋梗塞(こうそく)や脳卒中による死亡率が高くなるはずだ。
ところがフランス人はほかの欧米各国に比べてその死亡率が明らかに低い。しかもフランス人はコレステロールの値が高いにもかかわらず動脈硬化を起こしにくい。
動脈硬化とは、動脈の血管が厚く硬くなって弾力を失い、血管内部が狭くなって血液の流れが悪くなることだ。悪玉コレステロールと呼ばれるLDLが活性酸素によって酸化され、その酸化物が動脈硬化を起こしやすくしていることが分かっている。
その酸化物を赤ワインの中に含まれるポリフェノールが防いでいるというのが、フレンチパラドックスの答えだ。フランスは世界第1位のワイン消費国である。
ポリフェノールが含まれているのは赤ワインで、ブドウの皮を原料に使わない白ワインにはほとんど含まれていない。
ポリフェノールといっても単一の物質ではなく、アントシアン、カテキン、タンニンなどの物質の総称で、ワインや緑茶などの渋味や色、香りなどを決定する成分だ。カカオ豆にも豊富に含まれているので、ココアやチョコレートでも効果がある。抹茶にもカテキンが多いので、赤ワインが飲めないからと嘆くことはなさそうだ。
ポリフェノールの種類によって効果が違うことは分かっているが、解明されていない部分も多い。赤ワインは1日10ミリリットル程度で十分という報告もある。赤ワインもアルコールに変わりない。ブームに踊らされ、飲み過ぎて肝臓を痛めることのないように。