『第375話』 血圧変動と高血圧の薬

血圧は1日のうちでも変動があって、一般に活動しているときは高く、就寝中は低くなる。

血圧はいつ、どこで、だれが測るかによって値が変動する。病院などで測ると血圧が高くなる「白衣高血圧」は、医師や看護婦が測ることに緊張を覚えるからだ。

血圧計を装着して、1日の変動を調べてみると、普段の会話中や買い物先で暗算をしたときなども一時的に血圧が上がることが分かって興味深い。寝ているときでも血圧が高い人は、臓器障害が認められることがある。

血圧を下げる薬は種類が多い。これは血圧を上げる要因がさまざまあるからだ。自律神経の一つ、交感神経が活発に働くと心拍出量(心臓が1回の収縮で送り出す血液の量)が増え、血圧が上がる。ストレスや喫煙、階段の昇降などでも交感神経は活発になることが知られている。

動脈硬化が起きている血管では血液が流れにくく、血管に抵抗性が生じて血圧が上がる。また、食塩の摂り過ぎで体内のナトリウム量が増えると、それを薄めようとして水分が血液中に引き込まれ、血液の全体量が増えて血圧が上がる。ナトリウムは血管を収縮させる作用もあるので、これにより血圧が上がる。

専門的には薬が作用するメカニズムごとに利尿剤、カルシウム拮抗(きっこう)剤、α遮断剤、β遮断剤、ACE阻害剤と呼ばれるものが組み合わされて使用される。これらには特徴的な副作用があり、ACE阻害剤の「咳(せき)が出る」、カルシウム拮抗剤の「顔のほてりや紅潮」やα遮断剤の「めまいや動悸(どうき)、頭痛」、β遮断剤の「徐脈」などが挙げられる。これらの症状が現れたときはほかの薬に変更することで対処できる。

高血圧は自覚症状が少ないので、普段の自分の血圧を知っておくようにしたい。それには時刻や日時を変えて3回くらい測ってみるとよい。簡易な血圧計が普及して、家庭でも簡単に測定できるようになったが、その数値の上下に一喜一憂するのではなく、どんなときに上がりやすいのかなど日ごろのライフスタイルを見直し、改善する目安にしてほしい。