『第377話』 バイアグラと情報の入手
年末の慌ただしい中、インポテンツ治療薬クエン酸シルデナフィル(商品名=バイアグラ)を厚生省が薬として承認したというニュースが飛び込んできた。来年早々に発売される予定だ。しかし、すぐに保険診療で使えるわけではない。また、薬局で自由に入手することもできない。
医薬品にはさまざまな規制がある。医師が処方することで使用が可能になる要指示医薬品、薬種商では販売できない指定医薬品、反復使用によって薬物習慣を生じる可能性を示す習慣性医薬品、専門家の指導下で使用する広告規制医薬品、このほか、麻薬や向精神薬といった規制だ。これとは別に、保険診療で使用するためには薬価基準に収載されていなければならない。
バイアグラは新薬なので要指示医薬品に指定される。従って、医師の診察を受け、処方がなければ患者に渡すことはできない。
厚生省のインターネットホームページには、バイアグラを開発したメーカーが今年5月に発信したドクターレターが掲載されている。バイアグラと硝酸塩系物質を併用することによって急激な血圧低下が起こり、全身への酸素供給能力が低下する。
特に、心臓の心筋部における血流量(虚血状態)は同時に死を意味することになる。実際に、発売以来7月までに報告されている米国での69件の死亡例のうち、46件が心臓への影響が原因だ。治療に当たっても、心疾患があってニトログリセリン、硝酸イソソルビドなどの硝酸剤との併用がないか、あるいは発生する可能性がないかといったことについて細心の注意が必要とし、一般的に処方されている硝酸剤のリストが掲載されている。
さらに、狭心症などの虚血性心疾患発作を初めて起こした場合や救急救命処置中において併用が起こりうること。また、間違った自己判断によって女性が使用して、同様の危険性が生じる可能性があることを指摘している。
薬は適正に使用して初めてその絶大なる効果を発揮する。しかし、これを誤れば、危険極まりない毒物になってしまう。薬を提供する側と使用する患者との共通した認識が整ってはじめて治療効果が上がり、生活の質の向上が図れる。来年も医薬品情報の伝達を通して、読者の健康を願い、その維持増進に微力を尽くしたい。