『第381話』 ポリオの抗体低い20代前半
感染症を予防するには免疫力をつけることが重要だ。その一つの手段に、ワクチンの接種がある。
過去に厚生省が実施した伝染病流行予測調査によると、昭和50年から52年までに生まれた人(現在21~24歳)のⅠ型ポリオウイルスに対する抗体の保有率(抗体陽性率)が低いことが分かっている。ほかの年代では、80~90%の抗体保有率を示しているが、50年生まれの人で56.8%、51年生まれ37%、52年生まれ63.8%となっている。
低くなっている原因には二つある。①49年、50年に百日咳(ひゃくにちぜき)・ジフテリア・破傷風混合ワクチン(DPT)による2人の死亡事故があり、通常年よりもポリオワクチンの接種率が約20%低くなっていること②ポリオ生ワクチンはⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型ポリオウイルスを含んでいるが、このうちⅠ型ウイルスに神経毒性の弱い株を使用したところ、ほかの型との干渉作用のために人細胞への吸着が邪魔され、Ⅰ型の十分な免疫が得られなかったためだ。
日本では、1981年以降、自然感染による患者は発生していないので、ポリオが大流行することはないと思われる。しかし、この年齢層の人々が、ポリオ常在国へ渡航する場合には、ポリオに感染・発症する可能性は否定できない。また、年齢的に出産の時期を迎え、極めてまれだが、ワクチン接種を受けた家族と接触することで感染する可能性も否定できない。しかし、統計的には抗体価が低い人あるいはポリオワクチン未接種者であっても、ポリオにり患する割合は非常に低く、数百万回に1回程度だ。
しかしながら、この年に生まれた人がポリオウイルス常在国へ渡航する場合には、ワクチンの追加接種をお勧めする。ポリオに対して抵抗力があるかどうかは、費用は掛かるが抗体価を調べれば分かる。接種の有無は母子手帳などで確認する方法がある。生ポリオワクチンは口から飲み込む経口接種で、費用は数千円掛かる。