『第388話』 尿路結石の食事療法
飽食の時代に、痛風や尿路結石など贅沢(ぜいたく)病といわれる疾病が増加している。また、食事の内容が再発に大きくかかわっている病気は多い。尿路結石は5年で50%が再発するといわれている。そのために、適正な指導の下での食事療法が欠かせない。
尿路結石は、疝痛(せんつう)といわれる腰から下腹部にかけて、痛みを抑える麻薬を必要とするほどの激痛があることでも知られている。かかったことがある人でなければ冷や汗が出て、ときに吐き気を伴うこの痛みは理解できないようだ。
尿路結石は腎臓(じんぞう)から尿道にかけて、至る所でできる。結石ができた場所によって、腎孟(じんう)結石、尿管結石、膀胱(ぼうこう)結石などと病名が違う。結石の成分はカルシウム、蓚酸(しゅうさん)、尿酸、シスチン、リン酸マグネシウムアンモニウムなどだ。日本では蓚酸カルシウムを主成分とするカルシウム結石が80%を占める。
かつては、尿路結石患者に高カルシウム尿が多く見られることから、これを原因と考えてカルシウムの摂取制限が行われてきた。しかし、80年に英国で尿路結石の再発は尿中カルシウム濃度には関係なく、尿中蓚酸濃度に比例するという説が提唱された。また、93年に米国において、男子4万5千人を対象としてカルシウム摂取量と尿路結石形成との関係が調査された結果、カルシウム摂取が多いほど結石発生頻度が低いことが分かった。
蓚酸はあらゆる食品に含まれている。特に多いのは、ホウレン草、タケノコ、緑茶や紅茶、チョコレートなどだ。カルシウムを多く摂取すると腸内で蓚酸と結合して、蓚酸の吸収を防いでくれる。さらに蓚酸の吸収に脂肪が影響していることも分かってきた。腸内に吸収されずに残った脂肪酸がカルシウムと結合してしまうために、蓚酸がカルシウムと結合できずに残ってしまい、蓚酸の吸収量が多くなってしまうからだ。
現在ではむしろカルシウムは多く摂(と)る方がよく、脂肪の摂取を制限すべきだとされている。
尿路結石の除去をすると痛みがなくなって、医療機関に行かなくなり、病気であったことも忘れてしまう。すると、放置されて再発することになる。毎日の食事を意識的に管理することで、再発を防ぎたいものだ。