『第391話』 「ダイレクトOTC薬」
医療用医薬品は医師の指示があって、患者に渡すことができる。しかし、医療用医薬品のうち、患者自身が使用することを考慮して安全性と有効性が確認されると、厚生省は、医師の指示がなくても薬局から購入することができる一般用医薬品(OTC薬または大衆薬)として認可する。この薬は一般的に医療用医薬品が転用(スイッチ)した薬という意味で、スイッチOTC薬と呼ばれている。最近の例では、ヒスタミンH2ブロッカーの薬がある。
昨年12月に厚生省は、このスイッチOTC薬に関する承認審査について基本的な考え方を改定した。医療用医薬品は、認可後、有効性や安全性の使用状況を調査する市販後調査が義務付けられる。この度の改定では、スイッチOTC薬にも副作用や効果について報告する3年間の市販後調査が義務付けられた。また、1年後にはいったん市販後調査結果がまとめられて、承認条件や承認事項が見直される。
スイッチOTC薬を適正に使用していただくために、情報提供の方法、広告宣伝、販売方法に関して承引条件を付加することも盛り込まれている。こうしたことに加え、最近、ダイレクトOTC薬と呼ばれる医薬品が承認された。
厚生省は、スイッチOTC薬の申請についての見直しと同時に、医療用医薬品を飛び越えてダイレクト(直接)にOTC薬として承認認可の申請が行われた場合の考え方もまとめているからだ。
この度初めて、承認となったのは発毛・育毛の効果のあるミノキシジルという成分だ。
もともとカルシウム拮抗(きっこう)剤という降圧剤として開発・研究が行われていたが、その副作用の発毛に注目が浴びた。血管を拡張する効果によって、頭皮の血行を促進し、毛根の栄養状態を改善する。
日本ではミノキシジル1%を含む医薬品がダイレクトOTC薬として6月から発売される。
米国では、2~5%を含有するものがすでに販売されているが、効果、副作用の内容と発生頻度などを考慮して、当面は1%製剤のみの販売となる。
効果の度合は、はげ方のタイプで異なる。効果が得られるまで、1年以上掛かることもあり、十分な情報を得て、使用する必要がある。