『第393話』 「違法な健康茶」
健康茶についての質問は多い。健康食品のお茶を飲んで「便秘が解消されますか?」「痩(や)せますか?」などと聞かれるが、「そのようなことはありません」と答えていた。この回答の根拠は、健康食品は薬効を表す成分を含んでいないという大前提があるからだ。しかし、薬事法違反に当たる健康茶は別の話だ。
国民生活センターは「ダイエット茶」や「センナ茎茶」などを飲んだところ、腹痛、下痢、おう吐があったという報告が多いことから、注意点などについて情報提供することを目的に、昨年6月から今年の1月にかけて商品テストを実施している。その結果、茶類26銘柄中、センナ茎の表示のあった24銘柄に共通して含まれていたのはセンナ茎ではなくセンナ葉軸であった。また、16銘柄には医薬品のセンナ小葉が含まれ、センナに関する表示のなかったその他の茶類2銘柄はセンナ小葉の割合が高かった。1銘柄は医薬品相当量のセンノシド(薬効成分)を含んでいた。
生薬は樹木の皮や葉など薬効成分を多く含む特定の部分を使う。医薬品のセンナであれば、薬効成分のセンノシドを含有する小葉(葉の一部)の部分を使う。「センナ葉軸」とは葉の一部で小葉と同様にセンノシドを含んでいる。茎にはほとんどセンノシドを含まない。従って、茎の部分は食品扱いとなる。
センナはマメ科の常緑低木で、世界最古の医学文書といわれる「エーベル・パピルス」に下剤としてアロエやヒマシとともに記載されている。古来からアラビア医学で使われ、欧米諸国で繁用している生薬だ。中国では異国の瀉下薬(しゃげやく)という意味で「番寫葉(ばんしゃよう)」と呼び、近年になって薬用とされた。日本には明治以降に西洋医学の薬物として導入されている。こうした理由で、漢方薬に配合されることはあまりなく、単独で用いられるか、家庭用緩下剤(便秘薬)に配合される。
センナを使用するときに特に注意をしなければならないのは、妊婦及び授乳中の人だ。それは、有効成分のセンノシドが、子宮収縮を誘発して流早産する危険性があり、大量に服用すると危険であることと、母乳中に移行して、乳児に下痢がみられたことが報告されているからだ。
健康食品と思い込み、違法な食品を連用することで思いがけないことにもなりかねない。答えるほうも、解説を加えて答えなければならなくなった。