『第394話』 バイアグラの適正使用を
医薬品情報センターには毎日、医薬品関連の資料が送られてくる。その多くは、医薬品の説明書にあたる添付文書の改定案内書だ。添付文書は一定の書式が決まっていて、A4判1枚の裏表に小さな字と図表で説明が記載されている。特に重要な警告欄の記載事項は赤字で記載することになっているため、封筒を開けるとまずその部分に目を通す習慣になっている。
毎日改定される、添付文書を読む目的は患者に的確な服薬指導をするためだ。しかし、服薬指導をするためには添付文書だけでは到底足りない。薬剤師は書籍として発行されている医薬品服薬指導情報集や病院薬剤師会が記載要件を取りまとめ、製薬メーカーが提供するインタビューフォーム、新薬などの講習会に出席して随時必要な情報を集めている。
先日、こうした通常送付される中身とだいぶ違ったものが封筒の中から出てきた。表題は「バイアグラハンドブック」「新医薬品の使用上の注意の解説」という2冊の本だ。ハンドブックが41ページ、解説書は109ページという量で、一つの成分でこれほどの資料が一度に届けられたことはいまだかつてない。それほど、この度販売された勃起(ぼっき)不全治療薬の使用に当たっては徹底した注意を喚起しておかなければならない状況にあるといえる。
バイアグラには性欲を高める作用はない。最も心配されることは、精力増強剤や催淫(ささいいん)剤だと誤解をしている人が多く、こうした間違った認識から生まれる不正使用だ。医師の管理下において使用している場合と違い、正確な情報や指導を得にくく、複数回の使用によって危険な状態を生じる可能牲もある。
心機能障害のある人やその治療のために、硝酸剤や一酸化窒素を使用している人。重度の肝機能障害のある人。高血圧、低血圧、網膜色素変性症の人。脳梗塞(こうそく)、脳出血、心筋梗塞の既往歴が最近6カ月以内にある人は使用してはいけない。
厚生省は「救急時において硝酸剤などを使用することがあるため、バイアグラを使用していないかを確認をして救命治療に当たるよう異例の通達も出している。
厚生省は生活改善薬として、保険診療では取り扱わないこととした。自由診療となるので、医療費は掛かるが、診察を受けて、適正に使用してもらいたい。