『第397話』 脳は使うほどよい
あと20年もたつと、日本では4人に1人が65歳以上となる。街には高齢者向けの喫茶店やショッピングセンターも現われ、多くの高齢者用施設が建ち並ぶことだろう。
老化のメカニズムはまだはっきりとは分からないが、衰えは脳から始まる。
人間の脳には最も高度な思考をつかさどるニューロンと呼ばれる神経単位があり、10歳を過ぎると10年単位で10%ずつ死んでいくとも言われている。また生まれたときには140億個もあった神経細胞も20歳を過ぎるあたりから、毎日10万個ずつ死んでいくという説もある。
そのため高齢者になると脳の中の情報が行き来するスピードが1~2割ほど遅くなって、名前を思い出せなかったり、新しいことが覚えにくくなったりする。
とはいえ、高齢者でも大事なことは意外と覚えているし、お金のことなどになると随分頭が回る人もいる。こういう人たちは常に頭を使っているそうだ。
常に頭を使うこと、それはニューロンが刺激を受けることだ。ニューロンは刺激を受けると脳の中に新しい回路を次々と作っていく。
加齢とともに思考力や記憶力がなくなっていくのは、ニューロンや神経細胞の数が減るのが原因ではなく、新しい回路が作られないことによる。
つまり忘れっぽいとか頭が働かないということは老化現象ではなく、頭への刺激が少なく、神経が不活発な状態と言える。
脳にはもともと有り余るほどの神経回路や細胞があり、使えば使うほど新しいネットワークが形成され、実際には脳が衰えることはない。
またストレスを感じると、記憶や学習に関係している脳の「海馬」と呼ばれる部分に、糖質コルチコイドというホルモンが流れ込む。このホルモンが多くなると海馬の老化が進むといわれている。
歳をとってから穏やかな精神状態を保つことはまさに長寿の薬といえる。
最近の高齢者は昔の人よりもずっと元気で若々しい。さらに延びる寿命を楽しく生きるためにも、頭はどんどん使ったほうがよさそうだ。