『第398話』 尿からのメッセージ

尿には、健康状態を知るうえでのさまざまな情報が含まれている。

色一つをとってみても、健康な人の尿は無色透明か薄い麦わら色をしているのに対し、感染症にかかっていると尿は白く濁る。尿に血液が混じっているようなときは腎臓(じんぞう)に何か障害が起きている可能性がある。

甘酸っぱい果実のようなにおいのする尿は糖尿病が考えられる。ほかにも尿の量が少ない、トイレに行く回数が頻繁だ、尿が出にくい、排尿するとき痛いなど、いつもとは異なると感じたら、体から何か異常のサインが出ていると考えるべきだ。

健康な人でも、激しい運動をした後やたくさん汗をかいた後では、尿の成分が変わったりする。ランニングやスポーツの朝練習などを日課にしている人も多いだろうが、健康診断などで尿検査を受ける日には、このようなことは避けるようにしたい。

尿は通常やや酸性で、アルカリ性に傾くと腎孟炎(じんうえん)や膀胱(ぼうこう)炎などが疑われる。ただし、胃腸薬の中には重曹を含むものがあり、これにより尿がアルカリ性になることがある。このとき、センナ、大黄、アロエなど下剤効果のある生薬を同時に服用していると、尿は赤色になる。血尿と勘違いしないようにしたい。

尿にごく微量の血液が混じると尿潜血反応は陽性となる。これは尿検査用の試験紙を用いて調べるものだが、症状もなく、肉眼でも血尿だと確認できるときは腎腫瘍(しゅよう)や尿路上皮腫瘍が疑われる。

がんによる血尿は、1、2回、血尿が出ても、その後は正常の尿に戻るのが特徴だ。次に血尿が出るのは数カ月とか1年先のことになる。出血の量を心配するよりも、どこから出血しているかを一刻も早く突き止めるほうが重要だ。

泌尿器科の検査とはいえ、今では超音波検査やCTスキャン、MRIなどの画像検査が主流となり、あまり不快な検査はしない傾向にある。体が出すサインを見逃すことなく、的確な治療を受けるようにしたい。