『第401話』 医薬品情報提供システムの稼動
知ることの権利と知ってしまった苦悩、どちらを選ぶか。病気は常に苦悩と隣り合わせで存在している。
日本の医療は患者に対する手厚い思いやりがある半面、任せたことへの不安感と見えない部分への不信感がつきまとっている。
外国の一般雑誌を見ると、とても日本では考えられない医療用医薬品の広告が載っていて、事細かに薬効や副作用が書いてある。
日本も同様にいや応なしに、確実に知る権利を選択する、選択させられる方向に向かっているようだ。
厚生省は5月末日から「医薬品情報提供システム」を稼働させた。このシステムはわれわれ医療関係者にとっても今までの常識を覆す驚愕(きょうがく)のシステムに成長しつつある。
「医薬品情報提供システム」は医師、歯科医師、薬剤師に情報を提供するために構築されたシステムだ。しかし、インターネットを経由し、特定の人だけが接続できるような個人識別番号を使用していないため、容易にだれでもが中をのぞくことができる。
掲載しているのは医療用医薬品の添付文書(解説書)情報、厚生省や製薬企業が出した安全性情報、副作用が疑われる症例報告に関する情報、新薬の承認に関する情報だ。
ホームページの最初のぺージには、「提供している情報は、医師、歯科医師および薬剤師を対象に作成された専門的なものであり、一般の方が理解できるように配慮されたものではないことに十分ご留意ください。医療用医薬品は、患者独自の判断で服用(使用)を中止したり、用法・用量を変えたりすると危険な場合がありますので、服用している医薬品について疑問を持った場合には、治療に当たられている医師・歯科医師または調剤した薬剤師に必ず相談してください」という注意事項が掲載されている。
今後、こうしたシステムや専門書籍を通して、さまざまな情報が交錯する時代を迎える。
医療は画一化された状況で提供されているわけではない。添付文書に記載されていない使用方法や病態ごとによる使用方法の違いなど、より高度な薬物治療を受けている人もいる。誤った解釈や過剰な不安を抱くことなく、分からないことは聞く、という姿勢を持つことが必要だ。