『第402話』 「水虫の予防」

家族の中に1人でも水虫の人がいれば、ほかの家族にも感染する可能性がある。

水虫というのは白癬(はくせん)菌感染症につけられた俗称で、カビの一種である白癬菌が皮膚表面にある角層につき、そこで増殖して感染を起こすものだ。体のどこにでもできる可能性があるが、足への感染が多く、また一般的だ。

水虫の人が裸足で床や畳を歩けば、当然ながら水虫の原因となる白癬菌がそこに付着する。家族の中に水虫を持つ人がいなくても、プールや共同浴場など裸足(はだし)になる場所は水虫の感染経路になる。スリッパやバスマットなど多くの人が共用するものも白癬菌の付着している可能性が高く、いささかの不安を持ちながら使っている人も多いことだろう。時々、スリッパを重ねて片付ける人を見掛けるが、これではきれいなスリッパにまで床の細菌をなすりつけているようなものだ。

しかし、このような場所に行っても水虫に感染しない人も多い。白癬菌は付着してもすぐに皮膚の中に侵入して水虫の状態になるわけではない。靴下や靴を履く前に足をタオルで拭(ふ)くだけでも菌を落とすことができる。自宅に戻った後や寝る前に石鹸(せっけん)で足をよく洗えば感染は十分に防げる。

特にかゆみもなく、足の皮が少しむけている程度でも、すでに水虫になっていることも多い。受診してはがれた皮膚を顕微鏡で見てもらえばすぐに判断がつく。白癬菌は皮膚の表面近くにいるので、抗真菌剤と呼ばれる軟こうやクリームなどの外用剤がよく浸透する。症状がよくなっても菌が残っていることが多いので、患部より広範囲にそして長い期間塗り続けるのが完治への道だ。

しかし、足の裏全体が赤くなり皮膚が厚くなった場合や、つめに入り込んだ爪(つめ)白癬では外用剤の効果はあまり期待できない。このような場合はグリセオフルビンや塩酸テルビナフィンといった内服剤を1年から1年半ほど服用する必要がある。

家庭ではまめに床や畳を掃除し、スリッパを別々にするなどして感染予防に努めるとともに、水虫の人は自分が菌をまき散らさないよう、まめに薬をつけ治療に専念しなくてはならない。また、カビは乾燥に弱いので、家族の洗濯物を一緒に洗っても日光のもとで十分に乾かせば問題はない。