『第407話』 おむつかぶれに注意

赤ちゃんに限らず、高齢者向けの紙おむつが普及している。

寝たきりのお年寄りだけでなく、尿が漏れやすい人や頻尿(ひんにょう)傾向の人などが多く活用するタイプの物は、外出や旅行時にも便利だ。

赤ちゃんの場合、その皮膚は薄く、皮膚そのものの防御機能が未発達なため、さまざまな刺激や細菌に対して弱く、おむつかぶれが生じやすい。尿や便は体外では刺激の強い物質なため、その刺激だけでも皮膚が赤くなったり、びらんを生じたりする。

このようなおむつかぶれは高齢者にも生じる。毎日の入浴が可能なら、弱酸性の石鹸(せっけん)で丁寧にお尻(しり)や股(また)の部分を洗うようにする。

皮膚の表面は皮脂と汗が混じってできた皮脂膜という膜で覆われている。この皮脂膜にはさまざまな常在菌がいて、脂肪を分解して酸をつくり出す。これにより皮膚表面はいつも弱酸性に保たれ、細菌が繁殖しにくい環境をつくり出している。

普通の石鹸はアルカリ性で、この皮脂膜を洗い流してしまうので、肌が傷んでいるときは奨められない。

弱酸性石鹸で洗った後には亜鉛華(あえんか)という粉末が入った亜鉛華軟膏(なんこう)を薄めに塗る。この軟膏は刺激が少なく、びらんした皮膚の炎症を鎮め、治りを早くする。

入浴も困難なときはぬるめのお湯で汚れをふき取り、便などが付着している場合にはオリーブ油をガーゼに浸してふき取る。

かぶれがひどく皮膚が潰瘍(かいよう)化しているようなときは、亜鉛華軟膏ではなく、白色ワセリンやブフェキサマク、フルフェナム酸ブチルといった非ステロイドの消炎剤軟膏を塗る。

一般におむつかぶれにはステロイド軟膏は使う必要はないが、かゆみが強い場合、また前述のような薬が無効の場合は専門医に相談する。

塗り薬は擦り込まず、薄く平らに伸ばして塗る。量を多く塗ったり、回数を多くしても効果があるわけではなく、特に陰部では皮膚が薄く、吸収率がよいのでたくさん塗ったり、作用が強い薬では副作用が出やすくなる。

外用剤は皮膚の角質層が湿っていると吸収がよいため、ふろ上がりに使うと最も効果が高くなる。