『第409話』 薬用酒で夏を乗り切る
ある調査によると、ストレスの解消法として女性ではおしゃべりがトップなのに対し、男性では飲酒であった。実際、適度のアルコールは血液循環をよくし、仕事の緊張を解きほぐしてくれる。
アルコールに梅やカリン、ニンニクなどさまざまなものを漬け込んで家庭の薬用酒として楽しんでいる人も多いだろう。
お酒が苦手な人も梅酒などは飲みやすく、食欲が刺激されて夏バテ防止にもなる。昔から咳(せき)にはカリン酒、むくみにはアンズ酒、痛みにはイチジク酒など先人の知恵は家庭のレシピとなって残されている。
アルコールに朝鮮人参(にんじん)、桂皮、チョウジ、地黄などさまざまな生薬を漬け込んだものは決しておいしいとは言えないが、独特の風味となり、薬用酒として販売されている。
これはチンキ剤製法と呼ばれる方法で造られる。中でも古くから行われている冷浸法は細切りにした各種の生薬にエタノールあるいはエタノールと精製水の混液を加えて5日間ほど置き、後で布ごしするという簡単なやり方だ。アルコールの度数を整え、ブドウ糖などを加えて製品とする。
生薬エキスの入った薬用酒は虚弱体質や肉体疲労、食欲不振などの効能をうたう滋養強壮薬に分類される。肉体的疲労のみならず精神的な要素の大きい疲労に適している。
ところで、疲労は体の細胞や組織の機能が低下し、各器官の反応が鈍くなって与えられている環境に適応できなくなる状態だ。
細胞にはTCAサイクルといったエネルギーを産生する機構があり、このエネルギーを使って体の機能を維持している。このサイクルを円滑に進めるのは各種のビタミンだ。
したがって、疲労を感じるときはまずは休息とバランスのとれた食事をとることが基本。足りないビタミンは医薬品のビタミン類で補給する。
薬用酒は薬というよりも食前酒の感覚で飲まれている家庭も多い。暑い夏を乗り切るため、食欲増進を目的に適量を食事前のひとときに飲まれたらいかがだろうか。