『第418話』 アトピービジネスにご用心

現代人は1億総アレルギー疾患の時代を迎えている。花粉アレルギー、ダニアレルギー、ハウスダストや室内汚染物質によるアレルギー、そしてアトピー性皮膚炎と、少々のかゆみが出ても湿疹(しっしん)とは言わず、アトピーという言葉が出る。

ここにビジネスチャンスが得られる格好の材料が整っていた。医療保険診療外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追求する経済活動を「アトピービジネス」と呼んでいる。

その療法は数限りなく、健康自然食品、温泉入浴療法、エステ、医療機関による特殊療法などだ。

アトピービジネスは先人たちの知恵から生まれた善意の民間療法と違い、目的が営利追求にある。

薬事法では自然治癒したと考えられる例を、アトピービジネス療法で治癒したかのように、体験者の話として宣伝することを違法だとすることができない。しかし、こうした療法の科学的根拠はまったく実証されていないと考えていい。アトピーが悪化して治らない理由を、ことさらステロイド外用薬のせいにするのもアトピービジネスの共通点のようだ。

日本皮膚学会では平成10年10月からの4カ月間、全国11の医療機関に調査票を配布し、アトピー性皮膚炎が悪化し、入院に至った例についてその主たる悪化原因を主治医に記入してもらった結果を中間発表している。それによると、入院が必要とされた93例中、46例が不適切な治療によるものと判断された。ステロイド外用薬による副作用による悪化とされたのは、2例となっている。

アトピービジネスでは不利になるようなマイナスの情報を出すことがない。しかし、医療の現場においては両者の情報が伝えられる。ここが最もアトピービジネスの問題といえる点だ。つまり、患者を正しい理解・治療から遠ざけてしまう可能性があるということだ。

アトピービジネスは高価で無資格者による違法な治療行為が病気の悪化原因となり、結果に対する責任も不明瞭(りょう)だ。

さまざまなアトピービジネス療法がある。不安があれば主治医に問い合わせ、助言を受けて適切な判断をしてもらいたい。