『第422話』 焼き肉と喘息の薬
午前4時ごろになると肺の呼吸機能が最低になる。気管支喘息(ぜんそく)の発作が明け方に起こりやすくなるのはそのためだ。
気管支喘息は残念ながら根本的に治すことはできない。そこで発作を止める薬と発作を予防する薬の二本立てで治療が進められる。
たまに、吸入するタイプの薬はすべて発作を止めると思っている人がいるがそんなことはない。気管支喘息の薬は種類が多いので、発作を止める薬はどれなのか確実に知らないといざというときに命を落としかねない。
吸入薬で発作を止めることができるのはβ刺激剤と呼ばれるものだ。ほかに代表的なものとしてテオフィリン系と呼ばれる薬剤がある。こちらは吸入剤はなく、内服や座薬のタイプになる。
ステロイド剤は特効薬と思われがちだが、吸入薬では即効性がなく、発作を抑えるのは難しい。ステロイド剤が気管支喘息の切り札になるのは注射だ。大きな発作時にはβ刺激剤、テオフィリン系薬剤、ステロイド剤の3種類の注射が組み合わされて使用される。
一般にテオフィリン製剤が気管支喘息治療の基本になる。それはテオフィリンが、安全にしかも効果が得られる血中濃度とそれ以上では副作用が出る濃度がはっきり分かっている薬剤だからだ。
同じ量を飲んでも人によって血液中の濃度には違いが出る。そこで血液中の、テオフィリンの濃度を測定し、効果が得られる濃度に達するにはどのくらいの最を飲むべきか患者ごとに決める必要がある。
特に喫煙者は通常の1.5倍の量が必要になる。たばこを吸っている人の体内ではテオフィリンを代謝する酵母が多く作られる。そのためテオフィリンが体から早めに排せつされてしまうのだ。
また、焼き肉の好きな人でも同様のことが起こる。焦げた肉にはたばこ同様、環炭化水素と呼ばれるものが多く含まれ、これが体内に取り込まれるとテオフィリンを代謝する酵素を誘導し、テオフィリンの排せつを促す。そのため期待した血中濃度に達しなくなるというわけだ。
そんなことから肉類が喘息治療中の人には良くないとの話を耳にすることがあるが、毎日焼き肉を食べ続けないかぎりは大きな影響はない。