『第423話』 やけどの応急処置
台所でよく起こる事故に「切り傷」と「やけど」がある。どんなに注意深い人でも、切り傷とやけどを経験したことがない人はいないはずだ。
やけどの応急処置はとにかく冷やすこと、蛇口からの流水を利用するのが一番いい。それも、少なくとも30分から1時間以上のかなり長い時間冷却することが必要だ。冷やすのをやめて、なお痛みがあるようであれば、引き続き冷却を続ける。熱湯や熱い油が衣服の上にかかったのなら衣服を脱がせずに衣服の上から流水を当てる。広い面積であれば救急車が到着するまで、身体を冷やさないように注意しながら冷却する。冷却効果は受傷後8時間までは有効だ。
みそ、チンク油、馬油、アロエなどやけどの民間療法はまったく意味がないばかりではなく、感染症を引き起こすので危険だ。
「やけど」は皮膚組織が障害を受けた深さで分類される。Ⅰ度は表皮まで、Ⅱ度は真皮まで及び、水疱(ほう)ができて強い痛みを伴う。Ⅲ度は皮下組織にまで障害が及び、皮膚の弾力がなくなって硬くなる。皮膚の色もやけどを負った状況で違い、焼け焦げている状態から乳白色の状態までさまざまだ。
また、Ⅱ度は残Ⅱ度と深Ⅱ度に分けられる。深Ⅱ度になると治癒するまで1カ月程度掛かる。
小範囲の「やけど」で、その範囲を求めるときには手掌法を使う。患者の手掌の面積は体表面積の約1%だ。Ⅲ度とⅡ度以上のやけどが全身面積の10%を超えると生命の危険があり、点滴などの全身治療が必要になる。
しかし、実際の程度を判断するのは難しく、数度にわたる診断と専門的な知識がいる。
一般的に、Ⅱ度の「やけど」でできる水疱は、感染を防ぐ被服保護作用があるため破かないほうがよい。水疱の上からは、治療の途中で綿ガーゼがくっつかないようにシリコンガーゼを当てて使う。
Ⅰ度の「やけど」であれば消毒程度で軟こうなどはいらないが、痛みが強い場合は非ステロイドまたはステロイド消炎剤軟こうを塗るとよい。
カイロやホットカーペットで起こる「低温やけど」はやけどが深部まで及んでいる可能性があるので自己治療せず、必ず皮膚科か外科に受診することが必要だ。特に、感覚の鈍い寝たきりの高齢者や乳幼児に多く発生する。冬に向かって「やけど」の予防も十分に。