『第425話』 貯蔵に最適な脂肪
12月は何かと食べたり飲んだりする機会が多くなる。食べ過ぎてカロリーオーバーになるとその分は脂肪の形で蓄積される。
脂肪と聞くと、何か重く厄介なもののひびきがあるが、実は脂肪の形で貯蔵すると体重の増加をはるかに少なくできる。
例えば、脂肪を燃やしたときに発生する熱量は1グラム当たり9キロカロリーなので、1日1,000キロカロリーの熱量が余ったとすると、1,000÷9=111.1グラムの脂肪ができる。
これを糖質、例えばグリコーゲンのような形で貯蔵しようとすると、糖質の発生熱量は1グラム当たり4キロカロリーだから、1,000÷4で250グラムのグリコーゲンができる、1日250グラムずつ体重が増えていくと1週間で2キロ近くまで増加することになる。脂肪は油とは異なる。簡単に言うと、20度で液体なのが油、固体のものは脂肪と呼ばれるが、油も脂肪もさまざまな脂肪酸と呼ばれるものから構成されている。
食用油やマーガリンのテレビコマーシャルで「リノール酸やリノレン酸が増えました」などと言っているのは脂肪酸のことだ。これらの脂肪酸にグリセリンが結合したものを脂肪と呼んでいる。
良い脂肪、悪い脂肪などと言われるのは構成している脂肪酸の種類を言っている。良い脂肪といえども疾患によっては摂取してはいけないときもあるので注意が必要だ。
一般に良い脂肪といわれるのはオリーブ油や落花生油だ。これらは人の脂肪の脂肪酸構成に類似している。脂肪の消化能力が落ちている人には天然バターがよいが、動脈硬化の防止にはリノール酸やリノレン酸、アラキドン酸などを多く含む植物油が好ましい。
また、ヒマシ油の脂肪酸には刺激性があり、これが小腸粘膜を刺激して排便を起こさせる。手術時や検査の前に使ったり、また即効性があるので食中毒や薬物中毒などに用いられる。ただし、脂溶性の薬物中毒ではかえってその毒物の吸収を高めるので絶対に使用してはならない。
イモやカボチャ、大福もちなど油気のないデンプン質を摂取しても食べ過ぎれば、体内では脂肪の形で蓄えられていく。冬とはいえ、厚い厚い脂肪のセーターを着込むことのないよう注意しよう。