『第430話』 余った薬は服用するな

「以前もらった風邪薬がありますが、飲んでもいいでしょうか?」。こういう問い合わせがよくある。発熱、頭痛を主症状とする急性期の症状緩和に必要な薬は、自覚症状が治まると服用をやめてしまい、そのまま救急箱の中にしまわれることが多いようだ。心疾患や高血圧などの慢性疾患の薬が余っているとすれば由々しき状況だ。治るべき病気も治らないということになるからだ。

結論から言うと、余った薬は服用してはいけない。処方された薬はその処方日数が有効期限となるからだ。また、医薬品に関する情報が変わって、危険な状態が生じている可能性もある。

厚生省は昨年12月、次のようなアンケート調査結果を解析し、その内容を公表している。

平成11年1月から3月までにインフルエンザにかかった人のうち、脳炎、脳症を発症した事例について、解析できた181例(うち小児170例)と解熱剤の使用との関連性について検討したというもの。

その結果、解熱剤のうちジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸が使用された症例では、使用していない症例に比較して死亡率がそれぞれ3.1倍、4.6倍と高くなる可能性があることが指摘された。しかし、症例数が少ないことやジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸が重症例の解熱に使われる傾向があり、今後の研究をさらに待たなければならない状況だ。

薬害を防いでいくために、最終的な結果が得られる前の情報が厚生省から報告されることが多くなると思われる。医療機関では、常にこうした情報を入手して、注意深く薬物治療を行っている。適正に医薬品を使用するために、そうした情報を着実に薬局や医療機関から得ていかなければならない。

常に情報は新しい内容に変わっている。今更のように、生理学の教授が「今教えたことは明日には変わっているかもしれない。だから常に新鮮な情報を入手するように心掛けなさい」と言われたことを思い出す。