『第432話』 抗がん剤の副作用
優れた抗がん剤が開発されているにもかかわらず、結果的にはがんに勝てない現状がある。
これらの薬剤はもしも十分な量を投与できたならがんをやっつけることは可能だ。しかし、実際には患者がその薬剤の副作用に耐えられる量しか投与できない。
がんを消滅させられるだけの量を体に入れると、同時に人間の正常細胞も攻撃され、重篤な副作用で命を落とす確率が高くなる。
正常細胞も攻撃されてしまうのは、がん細胞がもともと正常細胞から生じたものだからだ。今ある抗がん剤では両者の細胞の質的な違いをはっきりとは見分けられない。そのため抗がん剤は敵味方の認識がないまま手当たり次第細胞に攻撃を仕掛ける。これがなかなかがんに勝てない理由の一つだ。
また、がんの中にも抗がん剤がよく効くものとそうでないものがある。例えば、急性白血病や皮膚がん、精巣腫瘍(しゅよう)、悪性リンパ腫などは抗がん剤によく反応する。特に小児の急性白血病は治る可能性が高く、副作用や合併症対策をしたうえでかなり強力な化学療法が行われる。
手術が第一選択となるものには、胃がんや大腸がんなどがある。抗がん剤が効きにくいものに対しても早期の発見、手術が有効となる。
抗がん剤は現在約80種類ほどあり、8つから9つのグループに分けられる。抗がん剤の副作用の代表的なものの一つに造血器障害がある。
これは貧血をはじめとして、血小板や白血球が減少してくるものだが、この副作用が怖いのはこれらが減少することによって感染症にかかりやすくなることだ。体力が衰えている場合にはそれが直接死につながるケースも多い。
また、ほかに症状としてつらいものに口内炎がある。抗がん剤により粘膜組織が障害され、炎症が起こるためだ。その対策としては、高尿酸血症治療薬のアロプリノールや膵(すい)炎治療薬のメシル酸カモスタットなどが効果があることが分かっているが、保険適用外の使い方になる。
健康な人でもがん細胞は常に生まれ、消滅することを繰り返している。がんという病気にかからないのは、人間が本来持っている免疫機能がうまく働いて、がん細胞の増殖を抑えているからだと考えられている。