『第434話』 骨の代謝と骨粗鬆症
体の成長が止まると骨は一見、何も変化していないように見える。
しかし、実際には削られたり、修復されたりという代謝を一定のサイクルで繰り返している。
まず、骨髄(こつずい)から出た破骨細胞というものが骨にくっついて骨を消化していく。このとき骨からカルシウムが吸収され、骨はやせていく。
ある程度、骨の消化吸収が進むと、今度は骨芽細胞というものがやって来て、カルシウムを使いながら削られた部分の復旧工事を始める。こうしてまた骨が形成される。
このとき、必要以上に骨の消化吸収が進んだり、復旧工事が間に合わなかったりすると、骨はやせ、中からカルシウムが抜けてすかすかの状態になる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が生じる。
閉経後の女性や卵巣摘出した人に骨粗鬆症が多いのは、女性ホルモンが少なくなることに原因がある。女性ホルモンには骨の消化吸収を抑え、骨形成を促進する作用がある。
女性ホルモンを補うことで解消されるが、不正出血が生じたり、長期投与では子宮がんの発生につながることもあり、よく医師のアドバイスを受ける必要がある。
最もよく使用されるのは、ビタミンDや活性型ビタミンD製剤だ。カルシウムを食事や薬から補給してもビタミンDがないとカルシウムは腸管から吸収されない。
ビタミンDは魚やきのこ類に含まれ、日光に当たることで人間の皮膚でも作られる。
また、ビタミンKも骨形成を促進する作用がある。ビタミンKは緑黄野菜、納豆、クロレラなどに含まれる。
薬剤としてのビタミンKにはメナテトレノンがある。この薬剤は脂溶性で食事時に分泌される胆汁酸と混じることで効果が現れるので必ず食事をしてから服用する。
ただし、ビタミンKには止血作用があるので心筋梗塞(こうそく)や脳血栓など血栓予防薬のワーファリンカリウムを飲んでいる場合には注意が必要だ。
骨からカルシウムが抜けるのを防ぐイプリフラボンという薬剤は長期投与が必要だが、胃痛や下剤、消化管出血などの副作用があるのでそのときは中止する。
骨は運動による刺激をある程度受けることでその密度を維持するといわれている。天気の良い日は散歩など積極的にしたいものだ。