『第446話』 フッ素水による虫歯予防
「医療用にフッ素の使い方は?」と尋ねると、ほとんどの人が虫歯予防と答える。それほどよく知られている。しかし、実際に使っているかといえば、フッ素入り歯磨きを使うぐらいで、実際の使用方法を知っている人はほとんどいない。
歯科医院では、フッ素水を使った洗口方法を指導している。毎日洗口する方法と週1回洗口する方法がある。一般的に毎日1回法では0.05%、週1回法ではやや濃度が濃い0.2%のフッ化ナトリウム水溶液を使う。それぞれ5~10ミリリットルをコップに量り取り、約30秒間口をクチュクチュと歯を洗うようにゆすいで吐き出す。寝る前に行うとさらに効果的だ。
2%フッ化水溶液を綿棒で歯に塗り、30分後に洗口する方法を年に4、5回繰り返す方法もある。
歯の表面はカルシウムとリンでできていて、常に脱灰と再石灰化を繰り返している。脱灰とは歯からカルシウムとリンがイオンになってだ液中に溶け出すことをいう。再石灰化はその逆だ。再石灰化するときにフッ素もいっしょに取り込まれると歯質はフルオロアパタイトという非常に硬く強い結晶構造になる。これが酸によって溶かされにくい歯になる理由だ。
現在のところ虫歯予防のためにはフッ素の利用が最も優れていると考えられている。しかし、フッ化ナトリウムもそれなりの毒性があり、体重5キロあたり100ミリリットル程度誤飲すると、おう吐、腹痛、下痢などの急性中毒を起こす。こうしたときには、牛乳やグルコン酸カルシウムを含有するものを服用させて、医師の診察を受けてもらいたい。
フッ化ナトリウム洗口剤は薬局で入手できる。しかし、子供はうまく洗口できないことなどから、しっかりした指導が必要だ。このほか、使用するフッ化ナトリウム水溶液の濃度や取り扱い、保存方法など、歯科医師の指導を受けて、虫歯予防をしてもらいたい。