『第447話』 山菜の見分けは正確に

山菜採りは今や人気のレクリエーションだ。人間はもとより収穫するという行為に喜びを感じる。魚釣りや潮干狩り、栗(クリ)拾いなども同様に、食べることよりも収穫することに夢中になりやすい。

山菜採りではしばしば中毒事件が起きる。もちろん食べてはいけない植物を山菜と間違えて食べたためだ。

よく知られているのはニリンソウと猛毒のトリカブトを間違えてしまう例だ。若葉がよく似ているうえ、ゆでるとトリカブトの若葉は苦味がなくなり食べやすくなってしまう。猛烈な腹痛とのたうち回るようなけいれんを起こすが、いまだに解毒剤は開発されておらず、トリカブト中毒だと分かってもなすすべがない。

しかし、トリカブトのすべてが猛毒なのではなく、全く毒のないものもある。日本には30種以上が分布しているが北海道や東北地方のものは特に毒性が強く、関西から四国地方のものは弱いといわれる。いずれにしても初心者はベテランの人に見分け方の指導を請うべきだ。

また、スズランの葉をギョウジャニンニクと間違えてスープにして食した人は次のような症状を訴えた。「食べ始めるとやがて頭が割れるように痛くなり、幻覚症状が起こった。全身がほてり、顔や体中にじんましんのような湿疹(しっしん)が広がった」。花が咲いてしまえば間違えようもない植物でも時期によってはこうしたことが起こりうる。

野生のワサビと思って採取したのがドクゼリであった例は意外に多い。致死量は若干のばらつきはあるものの約6グラム、刺し身に付けるくらいの量で呼吸が停止した人もいる。

初期症状は食後15分から90分ぐらいの間に起こる。むかつきや吐き気が起こり、適切な処置が遅れるとけいれん発作、窒息死へと至る。

ドクゼリは外観からはその違いは分からないが、その根をよく見てほしい。ドクゼリの根はワサビのそれよりも太く、縦に割るとタケノコのように空洞になっていて、いくつもの節があり、黄色い汁がにじんでいる。すり下ろしてもつんとくる辛さがない。

どうしても判断がつかない時は食べないにこしたことはないが、耳かき1杯粒度の量を口に入れてみて、辛くなく、口の中がぴりぴりきたらまずドクゼリとみてよい。間違ってもそれ以上口に入れてはならない。