『第452話』 必須医薬品リストの利用

医薬品にはさまざまな法律的な区分や一般的な区分がある。法律的な区分でみると劇薬・毒薬・向精神薬・麻薬・覚せい剤といった区分がある。また、処方せんを必要とする要指示医薬品、習慣性を示す習慣性医薬品、販売区分を分ける指定医薬品といった区分もある。

一般的な区分では、西洋薬・漢方薬・医療用医薬品・一般用医薬品・新薬・ジェネリックドラッグ・スイッチOTC・ダイレクトOTC・生活改善薬といった具合だ。

日本には、こうした医薬品が40,000種類程度流通している。医師が健康保険で処方する医療用医薬品だけでも約12,000種類ある。しかし、このうち外来で1人の患者さんに処方する医薬品は平均4種類程度となっている。

実に多くの種類から、医師が厳選した医薬品を渡しているかが分かる。しかし、逆に本当にこれほど多くの薬が必要なのかという疑問も残る。多くの製薬企業から別々の商品名で同一成分の医薬品が販売されている。中には腸で溶解する腸溶性製剤やゆっくりと有効成分が溶け出す徐放性製剤のように各製薬企業ではそれぞれの製剤に工夫を施し、より確実な効果が発揮できるよう研究された薬もある。WHO(世界保健機構)は1976年にエッセンシャルドラッグリストを提示している。現在、11版を数え、世界のあらゆる治療薬から312の必須(ひっす)医薬品成分をリストアップしている。

ともとは発展途上国用で、すべての疾病を治療することを対象としてはいないが、病気の予防や診断・治療に必要不可欠な質の高い優れた医薬品を示す必要があることから選択された。

しかし、逆から考えれば第一次的に選択されるべき医薬品群とも考えられる。新薬や高価な薬が優れた医薬品とは必ずしも言えない。医薬品の適正使用が叫ばれているが患者さんにすればどの医薬品を基準にしていいのかが分からない。その判断材料として、今後エッセンシャルドラッグリストの利用が拡大していくことを期待したい。